前回、外部の力を借りることで、強制的に「考える時間」をつくるというお話をしました。ただ、この時間は、ただ一人で黙って考える時間ではありません。そこに第三者が入ることで、初めて意味を持つ時間になります。
今回は、その「視点」の話です。
「人に迷惑をかけてはいけない」
「自分のことは、自分でなんとかすべきだ」
私たち日本人には、こういう感覚が幼い頃から染みついています。これ自体は悪いことではありません。ただ、経営者という立場になると、この感覚が思わぬ形で足かせになることがあります。
社長の一言は、社員にとって「不安の種」になる
社長が雑談のつもりで「今期は少し厳しいね」と漏らせば、現場には「昇給がない、ボーナスが減るのでは」という不安が走ることがあります。「来期の採用は止めようかな」と独り言を言えば、「この会社、大丈夫だろうか」という迷いが生まれることもあります。
社長にとっては単なる「迷い」や「問いかけ」であっても、社員にとってはこの会社にいていいのかという、漠然とした不安の材料になってしまうのです。
このような構造があるからこそ、多くの社長は、弱音や迷いを社内で口にできません。「自分が弱みを見せれば、社員を不安にさせる」という思い込みが、知らず知らずのうちに強まっていきます。
もう一つ、「知識にお金を払う」ことへのためらい
日本人特有の感じ方は、もう一つあります。モノには対価を払うが、知識やアドバイスには対価を払いづらいという感覚です。
これも、幼い頃から知らず知らずのうちに染みついている感覚の一つだと思います。形のあるものには、値段がついていることに違和感がなくても、話を聞いてもらう、意見をもらう、といった「形のないもの」にお金を払うことには、どこか抵抗を感じてしまう。経営者が外部の力を借りることをためらう背景には、この感覚も影響していると思います。
経営者の孤独は、思い込みだけの話ではない
これは、単なる精神論ではありません。東京都と大同生命による共同研究でも、中小企業経営者のストレス要因の一つとして、「孤独感」が明確に挙げられています。設備、資金、時間の不足と並んで、経営者の孤独は、実際に働きがいを下げる要因として、研究の対象になっているのです。
社内では弱みを見せられない。かといって、家族や友人に経営の悩みを話しても、実感を持って理解してもらうのは難しい。結果として、経営者は、社内にも社外にも本音を話せる相手がいないまま、一人で抱え込んでいくことになります。
「自分でなんとかすべき」ではなく、「なんとかしてきた」
この感じ方の背景には、もう一つ、経営者ならではのプライドがあります。
多くの経営者にとって、「自分でなんとかすべきだ」は、単なる規範ではありません。創業からここまで、資金繰りも、トラブルも、人の問題も、実際に自分の判断と行動でなんとかしてきた、という成功体験の積み重ねです。だからこそ、「今回も、自分でなんとかできるはずだ」と、無意識のうちに思ってしまいます。
この自負心自体は、決して悪いものではありません。むしろ、ここまで会社を続けてこられた、何よりの証です。
ただ、問題はこの自信が、相談するタイミングを遅らせてしまうことです。実際にご相談をいただくのが、ギリギリ、あるいはすでに手遅れに近い段階になってから、というケースは決して珍しくありません。そこまで状況が進んでしまうと、打てる手が、ほとんど残っていないことも多いのです。「自分でなんとかできる」という自信と、「まだ大丈夫」という過信の境目を自分一人で正確に見極めるのは、実はとても難しいことなのだと思います。
「頼る」は、「弱さ」ではなく「選択」
ここで、少し見方を変えてみたいと思います。
外部の力を借りることは、自分にできないことを代わりにやってもらうことではありません。自分一人ではできない「客観的な視点」を、意図的に取り入れるための、経営判断の一つです。
自分のことになると、「でも、社員はこんな状況だし」「だって、競合が値引きしているし」というように、どうしても主観が先に立ってしまいます。良くも悪くも、それが人間です。第三者の視点が入ることで、初めて見えてくるものがあります。それは、経営者としての強さを損なうことではなく、むしろ、会社を成長させ、長く続けていくための、合理的な選択だと、私は思っています。
次回は、実際に外部の力を借りることで、経営者にどんな変化が起きるのかを、具体的な事例とともにお話しします。
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