【事業承継】「親父の考えだから、うちはダメなんだよ」

前回、事業承継にかけられる時間についての出来事をご紹介しました。
今回は、いざ話し合いを始めた時に起こりがちな、親子の対立についての出来事です。

誰に継がせるかは、まだ決めなくても大丈夫です。ただ、実際に話し合おうとすると、壁にぶつかることがあります。

創業40年を超える、ある和菓子店の話です。社長は72歳、今も自ら厨房に立ち、あんや生地を仕込む職人でした。店を任される息子さんは38歳。10年前に修行を終えて戻り、父のもとで働いていました。

技術や商品の話では、対立しない

あんの炊き加減、生地の厚み、季節ごとの新作和菓子。技術や商品の話をしているときの二人は、驚くほど息が合います。息子さんは父の技術を心から尊敬していましたし、父も、息子さんの舌の良さを認めていました。接客の仕方についても、意見が食い違うことはほとんどありません。

ところが、話題が「経営」に移った瞬間、空気が変わります。

「ネット販売や催事への出店を増やしたい」「新しい厨房設備のために、借入をしてでも投資すべきだ」
息子さんがそう切り出すと、社長は決まってこう返します。

「そんな商売のやり方で、うちの味は守れない」

継ぐ側「親父がそんな考えだから、うちの店はいつまでも変われないんだよ」

継がせる側「お前はまだまだ、商売の厳しさを分かっていない」

二者だけで話すと、感情がぶつかり合い、話が前に進みません。

第三者が入ると、様子が変わる

そこに、私のような第三者が入ると、様子が変わります。

社長は私に話しながら、実は息子さんに聞かせています。息子さんも、私に話しながら、実は社長に聞かせています。

直接ぶつけると喧嘩になる本音も、間に人がいることで、初めて届くようになります。そうして双方の想いが少しずつ一致し、具体的な承継計画へと進んでいきます。

技術や商品の話では対立しないのに、経営の話になると途端にぶつかり合う。これは、決して珍しいことではありません。技術には「正しいか、正しくないか」という物差しがありますが、経営には、それがないからです。どちらも正しく、どちらも会社を想っているからこそ、意見がぶつかります。親子だからこそ、近すぎて素直に言えないこともあります。長年一緒に働いてきた分、期待も、もどかしさも積み重なっていて、二人だけで話すとどうしても感情が先に立ってしまうのです。つまり、同じ内容でも、誰が伝えるかによって受け止め方が大きく変わることがあります。

ここまで6つの出来事をご紹介してきました。事業承継は、経営者お一人の問題ではなく、ご家族、社員、取引先、そしてご本人と後継者との関係にまで関わる、会社全体の問題です。まずは、今の状態を整理し、備えておくことから、始めてみませんか。

※実際にあったご支援を基に、特定できない形で再構成しています。

事業承継について、まとめてご覧になりたい方は事業承継サポートページもご覧ください。

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