前回、取引先への影響についての事業承継の出来事をご紹介しました。
今回は、「時間」についての出来事です。
伊豆でホテルを2軒、都内で飲食店を数店経営する、60代後半の経営者がいらっしゃいました。
「今後、事業をどうされるつもりですか」と伺うと、「娘に継いでほしい」とのお答えでした。
ただ、娘さんは遅くにできたお子さんで、まだ大学生。ご本人にその話をしたことはないとのことでした。
逆算すると、見えてくること
娘さんが継ぐとして、大学を卒業し、修行としてホテル業に就職し、数年後に入社する。そこからようやく事業承継を考え始めるとすると、社長は75歳前後になっている計算でした。
「その年で、娘さんを伴走して支えられますか」と伺うと、
「難しいかもしれません」
と答えられました。
事業承継の準備には、一般的に5年から10年単位の時間が必要と言われています。だからこそ、「まだ早い」という感覚こそが、実は一番の落とし穴です。今は問題なく経営されている方ほど、「今、動き出す理由」が見つかりにくいものです。
この社長の場合であれば
そこで、次のような提案をしました。社内に、会社全体を見渡せる方がいらっしゃったので、まずはその方に、ワンポイントリリーフとして「雇われ社長」になっていただく。そして、娘さんが入社されたタイミングで、ご自身とその方の二人で、娘さんを伴走しながら育てていく、という流れです。
つまり、いきなり親族に継がせるのではなく、いったん社員に継いでもらい、その後にあらためて親族へ承継する、という順番です。
もし、社内にそうした方がいらっしゃらない場合は、その育成から始める必要があります。
事業承継は、決めてから動くのではなく、動きながら決めていくものです。想定より、時間は残されていません。
次回は、いざ話し合いを始めた時に起こりがちな、親子の対立についての出来事をご紹介します。
※実際にあったご相談を基に、特定できない形で再構成しています。
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