【事業承継】明日から、誰の指示を仰げばいいのか

前回、事業承継を考えていなかったために、ご家族が困ることになった出来事をご紹介しました。
今回は、社員の立場から見た出来事です。

ある製造業の会社は、社員15名ほどの規模でした。

社長がすべての受発注の判断、価格交渉、取引先対応を一人で担っており、右腕と呼べる存在はいませんでした。日々の業務は問題なく回っており、社員たちもそれぞれの持ち場で真面目に働いていました。

ある日、社長が体調を崩し、業務復帰は難しい状態となります。

誰も、全体像を知らなかった

翌朝、出社した社員たちは、誰に指示を仰げばいいのか分からず、電話が鳴っても対応できません。「納期を短縮してほしい」「見積額を交渉したい」などの取引先からの問い合わせに対して、明確な回答ができる人が社内に誰もいないのです。

経理を担当していた社長の奥様が急遽、名目上の代表に就きました。とはいえ、担っていたのは数字を税理士へ渡すための入力程度で、経営の実務には携わっていなかったため、実際の経営判断はできません。数ヶ月の間、会社は事実上の機能不全に陥り、業績はみるみる悪化していきました。
そして、数名の社員が見切りをつけて辞めていき、業務が回らなくなり、悪循環のスパイラルは止まりませんでした。

「せめて、誰か一人にでも仕事の全体像を共有していてくれたら」

残った社員たちが、後になってそう漏らしていたそうです。

業務が特定の一人に集中し、その人にしか分からない状態のことを、「属人化」と呼びます。中小企業では人員にかぎりがあるため、業務が共有されていることは少なく、属人化していることが非常に多いと感じています。
事業承継というと、経営者本人と後継者候補の間の話だと思われがちです。しかし、実際に一番早く影響を受けるのは、日々の業務を回している社員の方々です。社長が一人で情報を抱え込んでいる会社ほど、この空白の影響は大きくなります。

誰に継がせるかは、まだ決めなくても大丈夫です。ただ、「自分が急にいなくなったら、誰が何を分かっているか」を、一度整理しておくことはできます。それだけでも、残される社員の方々にとって、大きな違いになります。

次回は、取引先の立場から見た、同じテーマの出来事をご紹介します。詳しくは事業承継サポートページもご覧ください。

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